OMI税理士法人のコラム
法人化のデメリット
会社にすると維持運営費コストが増える
まず、会社を設立するのに費用がかかります。専門家に頼まないで事業主自身で設立手続きをした場合、設立に係る総費用は株式会社の場合約24万円です。ちなみに当事務所で設立すると、事業主自身で設立する場合より40,000円安く(約20万円)で設立することが出来るます。
また、平成18年の会社法改正で新たに導入された合同会社(日本版LLC)であれば約6万円で設立できます。合同会社は世間的には認知度は低いですが、株式会社よりも運営上の自由度が高く、比較的少人数で運営する場合に適した組織形態です。有名な会社でいえば、西友が合同会社の組織形態を採用しています。
次に、代表的なランニングコストとして社会保険料があげられます。個人事業の場合、従業員が5人未満であれば社会保険の加入は任意ですが、法人であれば社会保険は強制加入となっています。健康保険と厚生年金保険は会社と従業員で折半で負担しますが、労災保険は全額会社負担となります。
現実問題として、全ての中小企業が社会保険に入っているわけではありませんが、ルール上は強制加入となっています。社会保険は保険料が高いイメージがあるため、敬遠する方もいらっしゃいますが、掛金は報酬に比例するため、報酬が安ければ費用も安くなりますし、扶養家族数、税金等を考慮すると国民健康保険や国民年金よりも掛金は安くなるケースもあります。また、各種給付も手厚いので社会保険は前向きに加入を検討しましょう。特に従業員を雇う予定があるなら、従業員のためにも加入すべきといえます。
事業の資金を自由に使えない
個人事業であれば、事業で稼いだお金は個人に帰属するため、自由に生活資金に充てることができます。しかし、会社であれば、法人の財産と個人の財産とを明確に分ける必要があるため、会社のお金を経営者がプライベートのために自由に使うことはできません。
例えば、会社と経営者でお金の貸し借りをする場合にも、金銭消費貸借契約を結んでおく必要があります。
交際費の税務上の取扱
交際費に関しては、個人事業の場合「業務の遂行上必要」であれば、全額必要経費として認められますが、会社の場合、交際費に関して税務上の取扱が定められています。まず、資本金が1億円以上の会社であれば、交際費は50%しか非課税にならないため、税金で不利となります。資本金が1億円以下であれば、年間の交際費の800万円までの交際費は必要経費として認められ、また参加者の氏名等を記載した一定の書類を保存している場合には、一人当たり5,000円以下の飲食費等は全額必要経費に算入することができます。
このように、交際費に関しては、法人よりも個人事業の方が有利と言えます。しかし、個人事業の場合は、事業とプライベートの区別がつきにくいため、あまりに多額の交際費を計上すると、税務調査で否認される可能性があります。
社会保険や税金の手続きが煩雑
法人化によるデメリットとして、社会保険の手続きが煩雑であることが挙げられます。社会保険は加入時だけでなく、毎年1回は保険料算定手続きも必要となるため、事務手続きが増えてしまいます。
また、税金面についても、個人の確定申告よりも税務申告が複雑になるため、税務の専門知識が必要となります。会社であれば、税務メリットの適用もれ等を防止するためにも決算書・申告書の作成は税理士に依頼する方がベターでしょうが、その分コストもかかってしまいます。
会社法上の事務手続き
個人事業であれば、経営上の重要な意思決定は事業主の独断で行えますが、会社では重要な意思決定は株主総会や取締役会で決議する必要があります。そのため、株主総会・取締役会の開催や議事録の作成等の事務作業が発生します。なお、取締役・株主も一人のケースでは、当然ながら独断で意思決定できます。
また、会社であれば、年に1回決算公告をする必要があり、その費用もかかってきます。
ただし、中小企業の実務では、議事録の作成・決算公告等も全ての会社が厳密に運用しているとはいえないようです。